【ゼロからのアコギLINEサウンド入門】その①

最近は話題にしていなかったのですが、数年前に小出しでお伝えしたアコギLINEサウンドの使い方や考え方をお伝えします。歴史的な背景については主な流れを取り上げておりますので抜け、間違いなどがあるかもしれません。

音作りの考え方については根拠を伴ったものですが、他社様の考え方を否定するものではありませんので予めご理解ください。では始めます。

まずはエレキギターの成り立ちから知ろう

まず、現在販売されているストラトキャスターやレスポールなどの先祖となるエレキギターの歴史を簡単におさらいしてみます。

資料として残っているものの中では、市販エレキギター第一号は1931年にRickenbackerから発売されたFrying Panと呼ばれるラップスティール・ギターに遡ります。こちらのピックアップは、弦をまたぐように配置されたU時磁石でした。

続いて1936年、GibsonからES-150が発売。こちらのピックアップはP-90と言われる、現在でも使用されているマグネットピックアップです。

ここまではホロウボディギター(中に空洞があるタイプ)がベースでしたが、1950年になるとFenderからEsquire、その後Telecaster、Stratcasterなどが発売されました。これらが従来のエレキギターと大きく違うのは、ソリッドボディ(木が中身まで詰まった構造)ということでした。ソリッドギターはその後Gibsonなど他社からも続々と発売されていきました。

この段階では、マグネットピックアップが中心でしたが、現在ではピエゾピックアップを内蔵したものも販売されています。

エレキギターは「生音再現」を目標にしていなかった

アンプ開発以前は部屋の音響と(これはギターに限らず他の楽器全般に言えることですが)楽器自体の構造で音量を稼いでいたギターですが、マイクとスピーカーの出現により電気楽器化されたものがエレキギターだったわけです。しかしながら、ピックアップにより電気信号になった音は「甘いトーン」に変化し、ソリッドギターはサステインをもたらしハウリングにも強い特性がありました。それが生ギターには無い音色としてプラスに聴こえたギタリストが多かったようです。ハウリングに強い特性は大音量を可能にし、結果的にギターアンプは歪み、その(オーディオ的には悪い傾向とされる)歪みも一つの音色として取り入れるなど音楽のスタイル自体を変化させて行きました。

エレアコの登場

前述したとおり、ソリッドギター登場以前にもアコースティックギターにマグネットピックアップを搭載したギターは存在しました。

大きく流れを変えたのは、1969年のOvationのエレアコの登場です。
Ovationのエレアコは、従来は木製が当然であったギターを樹脂で製造します。また、マグネットピックアップが主流だった時代に、ピエゾピックアップを搭載しました。加工しやすい樹脂製であることを諒してサイドバックを球状にしたりと、従来のアコースティックギターと一線を画すデザインは、登場と同時にヒットはしなかったようですが、徐々にメリットが認められていきました。
メリットの一つとしてはハウリング対策です。アコースティックギターは「より大きい音を出す」ための構造になっており、箱自体がよく振動する構造ですが、このことで大音量でアンプから音を出した場合にサウンドホールから音を拾ってしまい、ハウリングを引き起こすのです。これに対策するためにOvationのエレアコは「振動しにくい構造」に作られ、それ以降、他社製も含めてエレアコ用のアコースティックギターは振動しにくい構造になっております。

フィンガーピッキングスタイルの進化

1981年、ウィンダム・ヒル・レコードからBreakfast In The Fieldというアルバムを引っ提げてMichael Hedgesがデビューしました。ウィンダム・ヒル・レコードというレーベルはWilliam Ackermanが主宰として立ち上がったレーベルです。

現存する動画を見る限りでは、William Ackermanはギターをライブ演奏する際にはマイクを立てて集音していたようです。
これに対してMichael HedgesはSUNRISE というマグネットピックアップとフラップという貼り付けるタイプのピエゾピックアップを「デュアルで」使用しています。(フラップは複数個貼ってある)

いわゆる「エレアコサウンド」とは一線を画す生音に近い音色と、マグネットピックアップによるサステイン、ピエゾピックアップによる「打音の集音」、デュアル(またはそれ以上)ピックアップによるサウンドの広がりがMichael Hedgesのシステムにはありました。また、エレキ化していることで各種エフェクトも使いやすいメリットもありますね。

現在においては、エレアコをそのまま買って使う方法や、Michael Hedgesのように各メーカーのピックアップを組み合わせて自分なりのシステムを使う方法など、多種多彩な選択肢があります。

エレキギターが登場して100年足らず。いい時代です。

さて。ここからが本番

駆け足でエレキギターの登場から、現代のアコギサウンドの作り方まで説明してきましたが、「結局どうすればいいの?」となっている方が多いと思います。ここからはその説明です。回りくどいですが全部読むと一通りの知識が身につくオトクな記事となっておりますのでお付き合いください。

ピックアップの種類

現在アコギに使用されている主なピックアップの種類と説明を箇条書きします。
ピックアップ(いわゆるマイクもそうですが)は基本的には音の振動を電気に変換する発電機なのでそれを前提とするとイメージしやすいと思います。

マグネットピックアップ

主にサウンドホールに挟み込むことで集音するピックアップ。スチール弦を弾いた弦の振動を電磁石とコイルが拾い発電します。構造上、弦の振動しか拾いませんので、箱鳴りや打音は拾いません。その為ハウリングには強いです。逆に箱鳴りを拾わないので生鳴りしているギターの音そのままを集音できるわけではありません。(一部、打音や振動を拾うタイプのものも存在します。)
音の特徴としては弦振動をしっかり拾いますので(箱の振動が収まったあとの)サステインが長めです。
スチール弦の振動を電磁石で拾うので、当然ですがウクレレやクラシックギターなどのナイロン弦には反応しません。

アンダーサドルピックアップ

ギターのサドルの下に、「曲がると発電する」ピエゾ素子という素材を敷くタイプです。箱全体の振動を拾うというよりは、サドルの振動を拾うので後述のコンタクトタイプに比べるとハウリングはしにくいです。つまり打音を集音することについても最低限です。こちらも箱全体の振動を集音しているわけではないので生鳴りしているギターの音そのままを集音できるわけではありません。
音の特徴としてはマグネットタイプと比較するとアタック音が強くエンベロープが短いです。その為ストローク系の弾き語りプレイヤーに多く採用されています。ナイロン弦についてはエンベロープの相性がいいことと、マグネットタイプが使用できないことからメインで使用されている印象です。

コンタクトピックアップ

アンダーサドルと同様にピエゾ素子を利用します。取り付け位置が違い、アコギの箱の内部に貼り付けます。打音をよく拾いますが逆に言うとハウリングには弱いです。弦の振動ではなく、箱の振動を拾うので、生音に近い場合が多いですが、素子のサイズや品種によっては特性が良くないものもあり、低音質の場合もあります。しかしながら生音に近いことと打音をよく拾うことから、フィンガーピッキング系のプレイヤーには好まれる印象です。

コンデンサマイク系ピックアップ

電池で動作するエレクトレットコンデンサマイクという小型のコンデンサマイクを箱の中に仕込むタイプです。空気振動を拾いますので生音にも近く、もちろん打音も拾います。しかしながら箱の中の振動は必ずしも外から聞く空気振動と一致しないことと、ハウリングに弱くその対策として回路的に低音を減衰させているタイプが多いです。また電池を使用するので電池切れを起こすと当然ですが音が出なくなります。

MEMSタイプ

メンブレンという膜の振動を電気信号に変換するセンサーを利用したものです。集音の原理としてはコンタクトピックアップに近いです。アナログ出力とデジタル出力がありますが出力方式によりアンプ(ここでは電気信号に変換するもの)もセットになっているので気にする必要はありません。最近少しずつ発売されているタイプであまり選択肢はありません。

結局どれがいいのか

プレイスタイルによって選択肢が変わりますが考え方の目安としては以下の通りになります。
◯打音を使うスタイルならコンタクトがほぼ必須。次善策としてマイクタイプ
◯バンドで使用する場合はコンタクトタイプ、コンデンサマイクタイプ、MEMSは避けたほうが無難。
◯ナイロン弦ではマグネットタイプは使えない。
◯エフェクトをかける場合はマグネットタイプが最もノリがいい。
ご自身で選ぶことができない場合はお気軽にご相談ください。他社製も含めてアドバイスさせていただきます。

ノンエレアコのすすめ

Ovationの説明でも述べましたが、エレアコには「本来生ギターでは歓迎されるべきはずの箱の振動」を意図的に抑制しているものがあります。これでは豊かな響きにはなりにくいです。
また、箱の振動を抑制していないタイプのエレアコは、かわりに「ハウリングするポイントを電気回路で削ってある」場合があります。こちらも同様に豊かな響きを損なうことがあります。
Tidemarkとしておすすめしているのは「ノンエレアコにピックアップを外付けしてアコギプリアンプを使用する」という選択肢です。たくさんのギターから好きなものを選べて、特定の周波数を削らずにプリアンプに送り、問題が出たらプリアンプで対応する形が最も「いい音への近道」なのです。

ではなぜアコギプリアンプが必要なのか? その②で詳しく解説します。

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