機材の構造から考えると見えてくるものがある

半年ほどTidemarkの活動を休止して、と言うかコロナが始まって以来、生ライブ関係のお仕事が失くなり、ライブ配信を自分自身やってみたりしていたのですが、「当たり前のことが当たり前ではなかったことに」今さら気付きまして、今日の記事を書いていく次第です。今後は不定期ではありますがTipsとして、初心者から上級者まで幅広く読んでもらえる豆知識や考え方を記事にしていきます。

エレキでもアコギでもキーボードでも考え方としては同じなのですが、機材の使い方に正解などないのです。いい音が出ればそれでOK。但し機材を(特に会場のアンプやスピーカーを)壊さなければという前提はありますが。正解はないんだけど、迷子にならないためのコツはあります。

さて、本題です。

大袈裟なタイトルを付けてしまいましたが、何も回路図とにらめっこしようとか、電気を勉強しようという話ではありません。古くから当社のブログやツイート、オフライン講座などに参加された方には釈迦に説法かもしれませんが、この二年間、とても多かった相談は、「ライブ配信におけるミキサーや楽器の使い方、音の拾い方」についてでした。よくよく話を聞いていくとその悩みの多くが「ライブ配信に限ったことではない、音響全般の知識不足」に起因しています。今回は3つの電気の流れの話をしましょう。

信号、電源、グランド

専門知識はそんなに必要無いとはいえ、この3つは是非とも覚えていただきたいキーワードです。何故ならばこの3つをぼんやりとでも理解できると、問題の87%(当社調べ)は解決できるからです。では小学生でもわかるように解説してまいりましょう。

信号とは

まずは信号です。と言っても、道路上の赤黄色青のアレではありません。音響においてはズバリ「音」のことです。

音とは空気の動きなわけですが、電子回路の中では「空気の動き」を「電圧の動き」に変換します。細かいことは置いといて、音が大きくなると電圧が高くなり、小さくなると電圧が低くなります。あ、その前に「音とはなにか」を知りたい? 知りたくなくても説明します。これを知らないとやがて積みますので。

音の三要素とは

音には色んな要素がありますよね? 第一に音の大きさです。大きい声の応援団長もいるし、か細い声の茶道部の部長も居ます。ここでフェミニストが登場するのはご勘弁ください。あくまでも例えの話に都合がいいのでこの二人に登場していただきます。とにかく、音の大きさという要素がある。これがまず第一の要素です。

第二の要素は、男性と女性で言えば音の高さが違うことはわかりますね? 音の高さというのは、空気が震える速さの違いです。大太鼓(バスドラ)と小太鼓(スネア)の音の近さは、大きい大太鼓のほうが低く、小さい小太鼓のほうが高いですよね? この時に震えているのは、太鼓の「面」、ドラムではドラムヘッドなどと呼びますが、あの皮の部分です。面が震えることで周囲の空気が震えます。大きいと大きくゆったりと震え、小さいと小さく小刻みに震えます。

第三の要素は、音の音色(おんしょく)です。例えば、同じ程度の声の高さの男性が二人いるとします。その声は全く同じでしょうか? 一人ひとり違いますよね? ではこれは、空気がどうなると違いが出るのでしょうか? ややこしいので結論から書きますと、「波形」が違うのです。では「波形」とは何でしょうか? これはそのまま、波の形のことです。そう、空気が作る波が「音」なのです。

このあたり楽しいので延々と語ってしまいますが、本題からそれるので詳しくは場を改めるとして、次に進みましょう。まとめておきます。

音の三要素は、 ①音の大きさ、②音の高さ、③音の音色 の3つの要素です。これを電気に変換すると  ①電圧の大きさ、②電圧の周波数の高さ、③電圧の波形 ということになります。とにかくあなたが持っているオーディオ製品や、電気を使う楽器の中では、音は三要素を持った電気信号として流れていくということなのです。

音を電気に変換するとは

では、どうやって空気の流れたるところの「音」を「電気」に変換するのでしょう? 

方法は色々ありますが、いわゆる「マイク」を使うのです。つまりマイクとは、空気の流れを電気に変換する装置だと言えます。

「マイク」にも色々とあります。※ここではわかりやすくマイクと表現しますが、ピックアップやセンサーなどと呼ぶ場合もあります。カラオケで使うマイクは、膜を声で震わせてその裏に電磁石がついています。コンデンサとかピエゾ素子などの部品で、震えを電気に変換する方法もあります。言い換えると、音という空気の震えで発電している、という事も出来ます。

電源とは

大抵の音響機材には電源が必要ですよね? アンプ、エフェクター、キーボード、ミキサーなどは一部の例外を除き電源が必要です。

「あれ? さっき登場したマイクは? 電源要らなくない?」 こう考えたあなたは、よく考えていますね。そうです。マイクには電源は必要ありませんね。※ここでは話をわかりやすくするためにコンデンサマイクは除外します。
スピーカーも一部を除き、電源は必要ありません。では、電源が必要な機材と、不要な機材の違いは何でしょうか?
それは、「電源は主に音の増幅のために使う」ということです。増幅とは大きくすること。音響機材は魔法の箱ではないので、音を大きくするためのエネルギーが必要なのです。マイクは空気振動を膜などを用いて発電しますし、スピーカーは電気から空気振動を作り出すので、電源が必要無いと言うわけです。

もちろん、表示用のディスプレイやLEDのためにも電気は使いますし、内部にマイコンが入っていれば計算用に電気を使いますが、それはまた別の話。

グランドとは

グランドとは基準点のことです。基準点とはなにか閃かないあなたのためにわかりやすく説明します。

あなたは集合住宅に住んでいますか? 何階に住んでいますか? 僕は高所恐怖症なので決まって1階に住みます。7階の知人宅を訪れると足が竦みます。だって下を見たら地上は遥か下、落ちたらどうしよう!!ってなるじゃないですか。でも、7階だろうと14階だろうと下を見なければ地上と同じです。お隣さんは同じ地面に住んでいる同じ高さの人。では、ここで7階にいるあなたが50センチくらいのジャンプをしたとしましょう。
1階の僕から見たあなたの高さは7階の地面が20mだとしたら、20.5mになるし、お隣さんから見たらあなたの高さは50センチです。これが「基準」ということ。僕の基準は地上0mだし、お隣さんの基準は地上20mです。

電気の世界でも「基準」を決めておかないと大変なことになります。僕から見てめっちゃ大きい音だったものが、手渡したお隣さんから聞いたら大したことない音量になったら困りますよね?
そこで、グランドを決めます。例えば僕もお隣さんも「地上を基準」と決めるとしたら、あなたのジャンプの高さが誰から見ても20.5mになるようにするためです。

例えばエレキギターの場合、ギター→エフェクター→ギターアンプと繋ぐとして、これらのグランドを繋ぐのです。そうすると大きな音は大きな音のままに、次の機材に渡されます。

ミキサーに繋ぐ楽器、例えばボーカルマイクや、キーボード、エレキベース、等はそれぞれの楽器のグランドだけでなく、ミキサーを介してすべての楽器のグランドが繋がります。これで問題が起きた場合のために一部の機材にはグランドリフトというスイッチがありますが、電源を介して結局はグランドは繋がっています。

もう少しだけ詳しく話すと、電源からグランドに電気は流れています。(単電源の場合。これの説明はまたいつか)つまり、回路がグランドにつながっていないと電気が流れる行方がなくなってしまうので、動作しません。

小学校で学んだ豆電球の実験でも、電池からの赤い線(電源)を切り離しても、黒い線(グランド)を切り離しても点灯しないのはこういう理由です。

信号、電源、グランドを理解すると何がわかるようになるのか

冒頭でも少し触れましたが、信号、電源、グランドを理解するだけで87%(≒)が解決します。

ギターエフェクターだとこんな感じです。
○信号、電源、グランドがつながっていないと大抵の場合機材から音が出ない。
○入力信号だけがつながっていない場合は、機材は動作しているがそもそも入力がないので無音が出力される。
○出力信号がつながっていない場合は、機材内部で正常に動いているが出力すべきところがないので音が出ないように感じられる。
○電源がつながっていない場合は、機材が動作していないので増幅部が動いていない。スルー回路があればそれを通して音が出る場合もある。(トゥルーバイパスのバイパス時など)
○グランドがつながっていない場合は、機材が動作していないので以下同文。

理解している方にはバカバカしいレベルの話ですが、本当にこれ、問い合わせの87%の理由なのです。
もっと具体的に書きますと
○信号がつながっていな場合は、ジャックまたはプラグの消耗が多い。
○電源がつながっていない事に気づかないのは、LEDなどのインジケータだけが電源につながっていてLEDが点灯していたりする場合があるためである。
○シールドの劣化で時折音が出たり出なかったりすることも多い。

内部的に故障している時に多い原因の一例

○比較的古い製品の場合はハンダ割れ(溶かすと治る)
○ジャックなどの接触部の消耗(交換すると治る)
○電源部の保護ダイオードの焼損(電源の逆接などで起こる)ほかも焼損し交換で治らない場合も多々あります。
○過電流によるIC(オペアンプや電源IC)の焼損(交換で治る場合が多い)
○可変抵抗の消耗による信号切れ(交換で治る場合が多い)
○コンデンサの消耗(交換で治る場合が多い)

このように、電源が過電圧や逆接などしない限りは、ほぼ消耗劣化が原因ですので修理も成功しやすいです。

良い電源を使いましょう。

今日はこのへんで。

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