前回はアコースティックギターのラインサウンドの歴史と、ピックアップの解説をしました。
今回はなぜアコギプリアンプが必要なのかという点について解説していきます。
どなたにもわかりやすいように最低限に説明しますので詳しく知りたい方はご自身でお調べになるか当店までご連絡ください。
ピックアップの問題点
前回の記事でお伝えしたようにピックアップには色々な種類があります。その中で大雑把に言うと電池を使わないピックアップにはいくつかの「超えるべき課題」があります。まずはそこを学びましょう。
インピーダンスが高い
インピーダンスという言葉はお聞きになったことがあるかと思いますが、分かりにくくて理解していない方が多いと思います。そこでとんでもなくへんちくりんな例えになりますが、こんなふうに考えてみてください。
ピックアップとは、弦や箱の振動を電気信号に変換する言わば「発電機」という事は前回解説しました。これを乗り物に例えると、自動車よりも原付バイクのほうがエンジンが小さくスピードが出ませんし、自転車(つまり人力)だともっと非力になることはご理解頂けると思います。仮にここに急な坂を登る必要が出たとき、自動車と自転車ではどちらがスムーズに登ることができるでしょうか?もちろん自動車ですね?
ちなみにエンジンだと分かりにくく鳴りそうなので電気自動車と電動アシスト自転車の具体的な数値を紹介しておくと、電力はW(ワット)という単位ですが、電気自動車の日産リーフは定格出力85kW(キロワット)で、電動アシスト自転車のヤマハPASは定格出力240W(ワット)なので、約350倍もチカラの差があります。
さてギターの話に戻りましょう。一般的な発電機は火力や風力を巨大なプロペラとモーターで電力に変換しますが、ギターの場合は弦の振動を(一例をあげると)電磁石で電力に変換します。当然ですがかなり小さな電力になることはおわかり頂けると思います。
電力が小さいとどうなるか?”坂を登れません。”但しこの場合の坂というのは現実の坂ではなくて、電気的には「負荷」といいます。
いや。。。まわりくどい。。。
「電力が小さいとインピーダンスは高くなる」と覚えてください。
音量が小さい
同様の理由で、ギターのピックアップは電力が小さいので、音量も小さくなります。
細かく言うと正確ではありませんが、電力とは電流✕電圧なので
◯電流が小さい→出力インピーダンスが高い
◯電圧が小さい→音量が小さい
ということは覚えておきましょう。
アクティブピックアップの課題点
構造的に電池を使うしか選択肢のないコンデンサマイクタイプやMEMSタイプとは別に、マグネットタイプやピエゾタイプにおいても、諸問題を解決するために、電池と電子回路を内蔵しているものをアクティブピックアップと呼びます。エレアコによってはコントロールできるプリアンプも内蔵しています。結論から言うと(構造的には)あまりおすすめしません。理由としては、市販流通品の多くは電池の使用時間の利便性を上げるなどの理由で、低電圧または低電流で動作している製品が多いことと、予め余計な周波数をカットしている製品が多いためです。(もちろん全てではありません。)
アコギ用プリアンプの主な機能
それでは次に、アコギ用プリアンプの主な機能について解説していきましょう。
インピーダンスを下げるバッファ機能
次段の回路で扱いやすくなるので、インピーダンスを下げる事は必須です。とはいえ難しいことではなく、「バッファ」という回路を使えば簡単にインピーダンスは低くなります。言い換えるとバッファとは「細かった電流を太くする回路」と考えるといいでしょう。
エレキギター用も含めてバッファには色々な製品がありますが、特定の周波数をカットしていないものがベストです。
音量を大きくするブースター機能
パッシブピックアップはそのままではミキサーで扱うには音量が足りません。その為ブースターにて音を大きくする必要があります。バッファと同じく特定の周波数をカットしていないものがベストです。
デュアルピックアップを1つにまとめるミキサー機能
デュアルピックアップはタイプによって各々の音量も違いますので、音量を揃え、1つの信号にまとめることで、不慣れなPAさんの負担を減らすことができます。アコギラインサウンドの扱いはライブハウスのPAさんも一般的に経験が少なく任せないほうがベターです。
イコライジング機能
デュアルピックアップの各々を馴染ませるために、また耳障りな音を消すためにチャンネルごとのイコライジング機能があると便利です。
位相を合わせる機能
デュアルピックアップそれぞれの位相はピックアップの位置により微妙に違ってきますので、最悪の場合反転して音を打ち消し合ったり耳障りな帯域が目立つようになります。Phaseスイッチで位相を反転することでそれらを改善します。
ミュート機能
チューニングの際にスピーカーから出る音を消すことでライブの質を向上します。
ブースター機能
ギターソロやアルペジオの際に音量をブーストすることで表現力の幅を広げます。
センドリターン機能
リバーブをかけた際に原音をしっかり残すことで輪郭と深いエフェクトを共存させます。
DI機能
ミキサーに送るためのダイレクトボックス(DI)を内蔵することで余計な配線や音質劣化を避けることができます。
これらを両チャンネルで完全装備したものは少ない
プリアンプにはギター内蔵のものや、足元に置くタイプがありますが、上記の機能をフルスペックで揃えたプリアンプは数えるほどしかありません。今回の新商品、Tutorial3は上記の機能を全て搭載しています。
上記の機能一覧を参考に他社製品と比較してみてください。スペックとサイズ、価格の全てに於いてTutorial3にはアドバンテージがあります。もちろん音質も。
あると便利な機能
Tutorial3に搭載されていない機能でも、あると便利な機能がありますので紹介しておきます。
ノッチ(パライコ)機能
基本的な音質はTutorial3で十分コントロールすることが可能ですが、ギター自体の特性や会場の反響の状態により、ハウリングやウルフトーンが発生する場合もあります。(ご自身でピックアップを搭載された場合はそれが原因かもしれません。)その際にはノッチフィルタを使用してハウリングしている周波数をカットします。パラメトリックイコライザでも代用が可能です。当店ではデュアルチャンネルのパライコ、SoundTreaterを販売しております。
おわりに
最後の方は宣伝のようになりましたが、一通りのプリアンプの使用方法や選び方がご理解いただけたかと思います。参考になれば幸いです。